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作品詳細
花いちもんめ(1985)
(原題:Gray Sunset)
■ストーリー
※ストーリーには結末の記載を含むものもありますのでご注意ください。もと大学教授の鷹野冬吉は、めまいがもとで、勤務先の松江歴史史料館で大事な縄文土器を床に落として破損してしまいやがて勇退を勧告された。その事を老妻・菊代に言いそびれたまま、毎朝弁当を手にあてのない出勤を繰り返している。冬吉には三人の子供がいた。奥出雲に嫁いだ長女の信恵。大手スーパーストアの店長となった長男の治雄。彼には同じ店に勤める友子という愛人かおり、この間題で妻の桂子とは喧嘩が絶えず仲は冷えきっていた。そして、独身で温泉町にバーを営む次女の光恵。ある日、夏休みで遊びに来ていた孫の豊を連れて、山陰の洞穴遺跡を訪れた冬吉は、帰り道を失念してしまう。彼は大学病院で“アルツハイマー型老年痴呆症”と診断された。ある夜、冬吉は日本海へ身を躍らせる。その後姿を追った菊代は、心臓発作で倒れ入院した。病院に付き添った桂子は、ドア越しに自分がアルツハイマーだと聞いてしまった冬吉の、自らの無残な老後を引き受けようとする姿に感勤。桂子の希望で、冬吉は大阪の治雄一家に引き取られることになった。冬吉の痴呆は、徘徊、幻覚と進行していく。自分が義母になりかわるしかないと覚悟を決めた桂子の顔は生き生きとしてきた。かつてのアルコール依存症も消えた。治雄も単身赴任先の神戸からよく顔を見せるようになり、孫の里美も豊も冬吉の徘徊に同行する。冬吉のボケがこの家族の亀裂を埋めていった。すっかり桂子を妻と思い込む冬吉は、散歩に出た公園でキスをねだる。そして、お礼にと預金通帳を桂子に無理やり手渡す。退院した菊代が冬吉を引き取りに来たが、冬吉は菊代の顔を見ても誰なのかわからない。衝撃を受けた菊代は、再度発作を起こし亡くなってしまう。苦悩の末、治雄は冬吉を精神病院に入院させることを決心する。数日後、そこを見舞った時、彼が目にしたのはベッドに縛りつけられた冬吉の無惨な姿だった。治雄は車で冬吉を家に連れ戻す。今度こそ、皆で冬吉を守ろうと堅い絆で結ばれたこの家族がやがて見たものは、壊れたゆきひらを土器の修復でも試みようとするように様々に重ね合わす冬吉の無心な姿だった。彼の口から呟きがもれる。それはかつて菊代が口ずさんでいた「花いちもんめ」のメロディだった。
■解説
ボケた祖父の世話がもとで亀裂を埋め、絆を深めていく一家族を描く。脚本は「序の舞」の松田寛夫、監督は「白蛇抄」の伊藤俊也、撮影は「燃える勇者」の井口勇がそれぞれ担当。
1985年10月10日 より
- 配給:東映
- 製作国:日本(1985)
■スタッフ
監督 | 伊藤俊也 (イトウシュンヤ) |
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脚本 | 松田寛夫 (マツダヒロオ) |
企画 | 日下部五朗 (クサカベゴロウ) |
プロデューサー | 奈村協 中山正久 |
撮影 | 井口勇 (イグチイサム) |
美術 | 山下謙爾 (ヤマシタケンジ) 小林勝美 (コバヤシカツミ) |
音楽 | 池辺晋一郎 (イケベシンイチロウ) |
録音 | 栗山日出登 |
照明 | 増田悦章 (マスダヨシアキ) |
編集 | 市田勇 (イチダイサム) |
助監督 | 土橋亨 (ドバシトオル) |
スチール | 大木茂 |
医学監修 | 西村健 |
■キャスト
俳優名 | 役名 |
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十朱幸代 (Toake Yukiyo) | 鷹野桂子 |
西郷輝彦 (サイゴウテルヒコ) | 鷹野治雄 |
野川由美子 (Nogawa Yumiko) | 金子信恵 |
中田喜子 (ナカダヨシコ) | 飯塚友子 |
二宮さよ子 (ニノミヤサヨコ) | 鷹野光恵 |
岸部一徳 (Ittoku Kishibe) | 石本義和 |
内藤武敏 (ナイトウタケトシ) | 館長 |
三浦真弓 (ミウラマユミ) | 看護婦 |
神山繁 (Shigeru Koyama) | 神経内科医師 |
河野美地子 (コウノミチコ) | 女子研究員 |
長谷川真弓 (ハセガワマユミ) | 鷹野里美 |
末広真季子 (スエヒロマキコ) | 児島洋子 |
田山涼成 (Ryosei Tayama) | 米屋 |
林彰太郎 (ハヤシショウタロウ) | 金子精一 |
岩渕健 | 鷹野豊 |
久米明 (クメアキラ) | ビデオのナレーター |
成瀬正 (ナルセタダシ) | セールスマン風の男 |
加藤治子 (カトウハルコ) | 鷹野菊代 |
千秋実 (チアキミノル) | 鷹野冬吉 |